価値の判断基準
マイケル・サンデル教授の共同体主義に対する考えを、儒者が論じる本を少し読んだ。
そこで関連した出来事と、それに関する思いをつらつら書いていきたい。
事務所の解約
自分は4年ほど事業を営んでいるが、つい最近事務所を解約し、今はフリーランサーに近い動きで仕事を行っている。
事務所を解約した理由は、持つ意味があまり感じなくなってきたからだ。
外注委託しているスタッフが事務所の一角を使用し、仕事を依頼するような関係性で運営していた。
内心、裁量性で報酬を支払えるスタッフを持てることにメリットを感じていた。
勿論、法律的にはかなりグレーな形だ。
外注委託契約の場合は拘束してはいけないため、拘束力が発生した場合には法律違反になる。
それ故、自社の仕事以外も行っていいという条件の下、仕事を依頼していた。
しかしそういう形を取っていれば、生計の大半をうちの会社の報酬に頼らざるを得ないケースが出てくることは明らかだったが、そこを見ないようにしていた。
結果、やはり依頼が少ないということで対立が発生。
私はその関係性が嫌になり、事務所を解約するに至った。
後悔と思い
路頭に迷わされたスタッフは今、フリーターとして生計を建てている。
日々、後悔の念が私を襲う。こんな結果を招いてしまって申し訳ない思いだ。
この日記を読んだ方にとって私は、最低最悪な経営者だと思うだろう。
私自身もそう思う。
そもそも、この結果に繋がるなら最初から「外注委託先の人に事務所を使わせる」なんて形を取るべきではなかったのだろう。
成り行きに任せた報いなのだと思う。
事務所解約後
私はこういった事態がこれから起こることを防ぐために、どういう対策が出来るだろうと考えた。
そこでまずはじめに、根本的な問題として「価値判断の基準が明確でない」ところを直そうと考えた。
今回「外注スタッフを常駐させる」という判断を行う際、なんとなくこうでいいやと思って決めてしまった。
その結果が、スタッフの失業である。最低だ。
もし価値判断の基準に、スタッフの幸せを私の幸せより1%でも多く考慮していたら、違う判断を下していたはずだ。
そして、もしそのモラル(自己幸福49%以下/他者幸福51%以上)が持てないのであれば、経営をすべきではない人間だ。
思いやれる関係性が明確にあってこそ、会社は成立する。
家族間は、この関係性が生まれやすい共同体だと思う。
だから「家族を大切に思う」ことの、ハードルが低いのだ。
一転、会社は難しい。
もともと家族以外の「他人」を大切に思うようにならなければいけないのだ。
そこに経営者の倫理観・道徳観が高いことを必要とする理由がある。
改善のために
事務所を解約し、価値判断の基準を明確にする作業を行った。
具体的には、
(1)そもそも価値判断の基準の作り方が分からなかったので、本を読み、他者の意見を取り入れた。(特に経営学・心理学・哲学を中心に読み漁った。その分野に対する、自分の興味関心軸が太いため)
(2)嫌々やっていることと、好きでやっていることを明確にした。
(3)社会の判断基準を明確にしたかったので、法律の解説を一通りしている本を読んだ。
すると、以下のことがわかった。
(1)日本には、和の文化があり、共生や調和を重んじてきた。しかし現代は西洋的思想が入り混じり、人それぞれに重んじる「価値」が異なっている。
(2)自分にとって大きく価値を感じることは何かを考えるために、思いつくことをノートにひたすら書き出した。
その結果「人に感謝されたい/人に感謝したい」という欲を満たすことが、一番の価値であることに気付いた。
具体的に言うと「死ぬ時にありがとうと言いたいし、言われたい。」これが自分の目標(?)になった。
そして、本書と出会う
感の良い方はもうお気づきになっているかもしれないが、どうしてマイケル・サンデルの本を読んでいるかというと、「正義」について価値判断の基準を作りたかったからである。
そんな渦中に見た、「これから正義の話をしよう」の講義動画は、価値判断の基準を作ることに大きな影響を与えた。
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
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そしてそれから3ヶ月ほど経ち、今日「サンデル教授、中国哲学に出会う」を読んだのである。
読んでみて。
全文読んだ訳ではないので、見当違いな感想・意見だったら申し訳なく思うが、やはり個人主義的思想は自分に合っていないと強く感じた。
西洋的思想の何割かは、「自分が成功するためには他者の苦痛も厭わない」ように見える。
そうして成り上がった先に見える世界がどんなに綺麗であろうと、自分が後悔の念に押しつぶされてしまいそうだ。
マイケル・サンデル氏はコミュニタリアニズム(共同体主義)であるようだ。
コミュニタリアニズムは、資本主義内部で共同体の価値を実現しようとする立場である。1970年代頃から、リベラリズム(自由主義)やリバタリアニズム(自由至上主義)に対する対抗軸として、政治社会学や政治思想の分野で使われるようになった。
私もそうでありたいと強く思う。
そしてそこに、私の価値判断基準を置こうと考えている。
(1)共同体主義である限り、他者利益を率先して考慮すべきであるし、そうでない行動・考え方は慎むべきである。
(2)他者に利益が生まれる行為を妨害するような行動をされる可能性があれば、その行為を避けるべきである。
(3)他者に利益が「より」生まれる行為を選ぶべきである。その利益が同等と見られる場合は、解釈を拡大して判断する必要がある。
それでも判断を下せない場合のみ、自己利益を判断基準とする。
これが私なりの価値判断基準である。
そしてこの判断基準は完全だと思っていない。
また多くの本を読んで、より自分に合った判断基準を探していきたい。